システムの隅っこにあいた風穴
時給700円のレジ打ちの日々を送っていたある日、
店長が僕に、将来総合的なリサイクルショップを開いてみたいというような話をした。
閉店間際のヒマな時間帯だった。
むろん店長にはそんな金も時間もできる見込みはなかったので、
明確な意志としてではなく、漠然とした夢物語として語ったのだと思う。
僕が本好きだということは店長も知っていたので、
「君は書籍の仕入担当をやらないか?」と言われた。
僕にとって就職とは死ぬことだったが、
書籍を仕入れるという行為は純粋に面白そうだなと思った。
「そもそも古本というものはどこから仕入れるのだろう?」
疑問が浮かび、帰宅してからネットで調べてみた。
そこで僕は「せどり」という言葉と初めて遭遇した。
このたった3文字の言葉が僕の人生を変えた。
ブックオフに足を運び、棚にある商品のネット上の相場を携帯ツールで調べ、
利益が出そうなものだけ買って帰って転売する…。
ビジネス経験などまったくなくても、これくらいならできるんじゃないかと感じた。
せどりで生活している人のブログをいくつか読んだが、みんな簡単そうにお金を稼いでいた。
初期資金は数万円くらいならどうにか用意できた。
さっそくある日のバイト帰り、職場の近くにあったブックオフに立ち寄ってみた。
田舎の小さな店舗だが、棚には色とりどりの本がぎっしり詰まっていた。
期待は膨らんでいたが、疑う心もあった。
うまい話には裏がある…そんな警告をこれまで生きてきた中で何度となく聞かされていた。
店員や他の客の目線を気にしながら、
携帯に書籍のISBN番号を指で打ち込んでいった。
表示される相場は「1円」が多かった。
当たり前だが、何でもかんでも利益が出るわけではなかった。
が、10冊ほど調べたとき、突然、
Amazon価格1000円を超える数字が携帯に表示された。
僕は何度も本のタイトルと価格を見返したと思う。
時間にして5分も経っていなかった。
Amazon価格1000円超えのそれは、
確かに目の前の105円コーナーに挟まっていた。
胸が少し高鳴った。
1000円というお金を稼ぐために、
僕は一時間以上もレジの前に突っ立って、
赤の他人達に頭を下げなければならなかった。
あるいは皿洗いなら、軽く数百枚の皿を
汗だくになりながら洗わなければならなかった。
それだけのお金が、目の前の棚に無造作に挟まっている・・・。
それから1時間ほどの間に500円〜1000円くらいの
利益が出る本をさらに数冊見つけた。
それらをすべてレジに持っていくと、
僕と同じく時給700円や800円で働いているであろうアルバイトが、
笑顔で黒い袋に詰めてくれた。
売れるかどうか確信はなかったが、
損をしても数百円なので気は楽だった。
帰宅してすぐにAmazonのアカウントを開設し、
買ったばかりの本を出品した。
見慣れたAmazonのサイトに自分の本が並んだ。
翌日は普通にバイトをした。
8時間みっちりレジ打ちをした後、休憩室の椅子に座って携帯を開くと、
見慣れないメールがAmazonから届いていた。
105円で仕入れた本が、1500円ほどで売れていた。
僕はすぐに立ち上がってその場をウロウロしはじめた。
それは僕の2時間分の労働の対価とほぼ同じだった。
売れた本をお客さんに発送しなければ、と思いたった。
幸い僕の職場は100円ショップだったので、
その場で封筒やテープなどの資材を買って帰った。
ホームページを参考にしながら、
慣れない手つきで買ったばかりの本を梱包し、
クロネコヤマトからお客さんの住所に発送した。
それでおわりだった。
ブックオフからAmazon、そしてお客さんのもとへと、
本を移動させただけでお金が生まれた。
その日から足繁くブックオフに通った。
毎日バイトが終わると、2〜3時間ブックオフで利益の出る本を探した。
ときには20冊以上仕入れられる日もあった。
3000円くらい利益が出る本が売れたときは有頂天だった。
3000円あれば学食で朝昼晩好きなものが食べられた。
牛丼屋やラーメン屋でトッピングだってできた。
欲しかったCDや本を新品で買えた。
友達とカラオケに行けた。
映画だって2回も見れた。
バイト帰りにブックオフに立ち寄るだけで、
そのような大規模な生活の転換をもたらすお金が稼げるということ…
これは僕の信じてきた価値観を根底から揺るがす事態だった。
お金とは誰かに雇われないと得られないものだと思っていた。
僕は古本屋を始めたのだと思い、さらに熱中してせどりをした。
色々と効率的な方法というものも研究した。
すると大変なことが起きた。
せどりからの収入が、バイトの給料を上回り始めたのだ。
丸1日立ちっぱなしで働いて、勤務終了後にくたくたになって椅子に座り込み、
携帯を開いてみたら、よくバイトの給料を圧倒的に上回る1万や2万の利益が発生していた。
嬉しいを通り越して呆然とした。
世の中に常識としてまかり通っている価値観に対して様々な疑惑が生まれた。
働くとは何か?
お金とは何か?
なぜこんなに必死に働いて5000円や6000円しか稼げず、
片手間のせどりで1万も2万も稼げるのか?
バイトの給料と合わせると、同世代のサラリーマンの収入を軽く超えていた。
店長に注意を受けたり、仕事を教えてもらったりしているとき、
ふと、俺の収入はこの人より多いのだな、とビックリすることがあった。
10年近く仕事に従事し、趣味や夢を捨て、
会社に人生の大部分を捧げてきた人の収入を、
ただの学生が3ヶ月ほどで超えた。
…もしかして本当に雇われなくても生きていけるのか?
足元がぐらぐらと揺らぐようだった
完全無欠と思われたシステムの片隅に、
ぽっかりと風穴が空いているのを僕は見つけた。
・はじめに
・第1部「僕の人生から就職が消えた」
・第2部「月収200万円の憂鬱」
・第3部「起業に興味のない起業家」
・第4部「燃え上がる家、没落の父」
・第5部「麗しき労働の日々」
・第6部「地獄のような労働との遭遇」
・第7部「労働、この恐るべきもの」
・第8部「システムの隅っこにあいた風穴」
・第9部「僕はアフィリエイトで生きていこうと思った」
・第10部「100万円という札束」
・第11部「資本主義のてっぺんらへん」
・第12部「香港旅行中にサラリーマンの年収分稼ぐ」
・第13部「手に入れた自由な人生」
感想はこちらからどうぞ⇒メールフォーム
面白い!と感じたらシェアをお願いします!
ブログランキングに参加しています。
読んでくれた証拠にぽちっとクリックしてくれると喜びます^^
↓↓↓
アフィリエイトで1億円稼いで自由になった元皿洗いのブログ TOPへ
この記事へのコメントはありません。